高校生や大学生の皆さんの中には「大学院に進学したいけど、どんなところかよく分からない」「大学院に行く意味ってあるの?」などの疑問を持っている人がいるかと思います。

この記事では、大学院に行くメリットやデメリット、行く意味が本当にあるのかなどについてお話しします。

大学院ってそもそもどんなところ?

はじめに、大学院がどんな場所なのかということについて簡単に説明したいと思います。

大学院に通う年数

まずは大学院にどのくらいの期間通うのかについてお話しします。

大学院は修士課程と博士課程に分かれています。多くの場合は修士課程で2〜4年間研究を行い、その後博士課程に進学します。博士課程は最短3年、最長で5、6年在籍することができ、修士課程と合わせると5〜10年程度になります。

もちろん修士課程修了後に就職する人も多くいますので、大学院に通う年数は人によって2〜10年とかなり差があります。

大学院でやること

次に、大学院生がどんなことをしているのかについてお話しします。

大学院では研究中心の生活を送ることになります。学部生と同じように講義も受けますが、必要単位数はそれほど多くないため自分の研究を主体的に進めることができます。

修士課程と博士課程のどちらにおいても学位を取得するためには論文を提出する必要がありますので、そのような成果を出せるように計画的に研究を行わなくてはなりません。

大学院に進学するには

大学院に進学するためには、基本的には大学院入試を受験する必要があります。

試験では、専門分野に関する知識や英語力などを問われる場合が多いです。また卒業論文など、受験以前の研究成果も評価の対象となることがほとんどです。

そのため大学院に進学するには、専門分野に関する知識がきちんと身についていること、研究で使える程度の英語力があること、研究成果を残していることなどが必要です。

知識や英語力の習得は普段から真面目に勉強していればそこまでハードルが高いものではありません。ただ東大にもいくつかありますが、卒業論文を提出しなくても卒業できる学科の場合は注意が必要です。

就職する場合とは違い、大学院に進学する場合には必ず卒業論文を書いて卒業するようにしましょう

大学院に行くメリット・デメリット

次に、大学院に進学するメリットとデメリットを2つずつご紹介します。

専門性の高い研究ができる

大学院に進学する一番のメリットは、学部の時よりも専門性の高い研究ができるということです。研究に充てる時間が取りやすく、教員や他の大学院生との距離も近くなることで研究がしやすい環境に身を置くことができます。

また学部生の間は利用できないような設備を使うことができたり、長期間の調査に行くことができたりと、大学院に進学すると多くのメリットが得られます。

論理的思考力が身につく

二つ目のメリットは、論理的思考力が身につくということです。

論文の執筆では、長い時間をかけて自分の考察や様々な議論をまとめ上げるという作業が中心になります。そのため、研究を行う過程で論理的思考力が身につきやすいというメリットがあります。

一つの物事についてじっくり向き合い自分の考えをまとめるという経験は、忙しい社会人にはなかなかできません。

また、ここで身につけた論理的思考力は、研究の場ではもちろん社会に出て働く場合にも大いに役立ちます

経済的な問題を抱えやすい

一方で、大学院進学にはいくつかのデメリットもあります。その中で多くの大学院生が直面するのが経済的な問題です。

大学院生の多くは20代半ば〜30歳前後です。同世代の多くが就職して自立している一方で、大学院生が自分の力だけで生きて行くのは厳しいというのが現状です。

もちろん親が研究を続けることに賛成してくれている場合は十分な援助を得られるかもしれませんが、そうでない場合は生活が苦しくなってしまうことも考えられます。

アルバイトをしても稼げる額は限られているため、少しでも経済的な負担を減らすためには奨学金を取るのが一番現実的です。

ただし奨学金も金額の幅が大きく、給付型と貸与型では雲泥の差なので、応募する前によく吟味する必要があります。

精神的に不安定になりやすい

経済的な問題とも少し関係していますが、大学院生は病みやすい傾向にあるように思います。

筆者の考える最も大きな原因は、成果が非常に見え辛いことです。研究を頑張っても論文を書いても、それが認められるのはごく限られた閉鎖的な場所である場合がほとんどです。対価もありません。

その一方で同級生や後輩が就職して社会の一員としてお金を稼いでいるのを見ると、自分のしていることに自信がなくなってしまうことがあってもおかしくはありません。

「やりたい研究があって自分で進学したくせに」と思われるかもしれませんが、他の院生と話していても自分のやっていることが本当に正しいのか一度は悩む人が多いようです。

もちろん人に認められたくて研究をしているわけではないのですが、自分のやったことの成果がほとんど見えないというのは少し悲しいものがあります。

また人によっては、かなりの孤独感から病んでしまうということもあるようです。確かに研究室は閉鎖的で人間関係が狭い場合が多く、そうなってしまう人がいても不思議ではありません。

大学院に行く意味はある?ない?

大学院に進学するメリットとデメリットについてお話ししましたが、結局のところ大学院に進学することにはどんな意味があるのでしょうか。

いくつかの場合に分けて考えてみたいと思います。

文系の場合

まず文系の場合についてです。筆者も文系の院生なので、自分の体験も踏まえてお話ししようと思います。

結論から言うと、大学院に進学する意味はあります

自分が就職するよりも研究を続けたいと思うのであれば、満足するまでやることが大切です。ですが、文系大学院に進学するにあたっていくつかの壁があるのも確かです。

筆者が進学するかどうか迷った時、一番悩んだのが自分したい研究に果たして意味があるのかということでした。

文系大学院は、「大学の延長」「経済的に余裕のある人がよくわからない研究をする場所」というマイナスのイメージを持たれていることが多いです。院生の中には「いつまで学生やるの?」「働かなくていいなんていいよね」などの言葉を親戚や知人から言われた経験のある人も少なくないと思いますが、こういった印象がなければこんな言葉が出ることはありません。

こういうことを言う人は、学問を「社会の役に立つかどうか」という観点から評価する傾向にあります。確かに文系の研究は直接社会の役に立つのか疑わしいと思われても仕方ありませんし、実際に新しい技術やモノを生み出すこともほとんどありません。この点だけから考えると、文系の研究は何の役にも立たない意味のないものになってしまいます。

ですが別の視点から見ると、案外社会の役に立っていないわけではないということがわかります。

今までみなさんは歴史や国語などの科目を勉強してきたと思いますが、それはあらゆる文系学問の蓄積でできています。現在でも歴史の教科書が修正されることがありますが、それも研究によって新しい事実がわかったからできることです。

文系学問の研究は社会全体における学習の土台の一部となっており、研究する人がいなくなってしまうのは困るのです。

つまり一見意味のないように見える研究も、やること自体に意味があるのです。なので「自分の研究に意味なんてあるのか」と進学を迷っている人も自信を持って進学してください。

ちなみに修士課程で卒業する場合、大学院で学んだことは仕事にはほとんど結びつかないと考えておいた方が良いです。反対に言えば勉強している途中で気が変わって修士で卒業しても、それまでの研究に縛られることなく就職することができます。

理系の場合

理系の場合は文系と違い、進学によってその後の選択肢が広がる場合が多いようです。なので文系とは違った意味で進学する意味は大いにあると言えます。

IT系や大手のメーカーでは大学院卒の人材を求めている場合が多く、それに合った研究をしてきた院生は非常に重宝されます。中には大学院卒以上を募集の対象にしているポストもあり、学部卒より待遇が良い場合も多くあります。

理系の大学院進学率が非常に高いのは、このメリットの影響が大きいと考えられます。

その一方、大学に残って研究を続けることも文系の多くの研究と同様にとても重要なことです。理系の中にも様々な分野があり一概には言えませんが、どの分野においても大学院に進学することに意味はあると言えます。

社会人の場合

番外編として社会人の場合についても触れておきます。

大学院で学んでいると、働きながら学位の取得を目指している人や会社を辞めて入学してきた人など様々な学生に会うことができます。

このような社会人や社会に一度は出ていた人が大学院で研究をする意味は、筆者が言うまでもなく大いにあります。こういった人たちは研究への熱意に満ち溢れていることが多く、純粋に尊敬します。

まとめ

大学院に進学するメリットやデメリットなどについてお話ししてきましたが、筆者の考えとしては、大学院で研究がしたいと思ったら意味があるのかないのかは深く考えずにとりあえず進学の準備をするのが良いと思います。

意味は研究をしているうちに何かしら見つかりますし、もし研究者以外の道に進みたくなっても軌道修正ができるからです。