法学部の答案を作成するにあたって規範定立をすることは、避けては通れない道であり、もはや正しく規範定立することこそが高い評価をもらえる答案を書くための近道といっても過言ではありません。

「”規範定立をする”って何?」という声が早速聞こえてきそうです。

この記事では法学初心者を想定読者として、規範定立について網羅的に解説していきます。

規範定立とは?法的三段論法との関係性

最初にことわっておくと、規範定立を一言で説明するのは誤解を招きやすく難しいことです。そこで、以下ではその概念を理解しやすいように順を追って解説していきましょう。

まず、規範定立は“きはんていりつ”と読み、ざっくり言えば法学部の答案の書き方に関係するキーワードです。まずはこの程度の理解で構いません。(条文や条文の解釈、判例等から規範を立てること「規範定立行為」と呼ぶこともあるので覚えておいてください。)

大前提として、法学部の答案は結論よりもその結論を導いた過程が評価されます。つまり、 結論がいくら妥当と思えるものであろうとも、その過程が抽象的であったり、曖昧であったりすると高い評価はされず、最悪の場合単位を落としてしまう可能性もあります。

ポイント

裏を返せば規範定立さえしっかり理解しさえすれば大幅に減点される答案の書き方を避けることができます。

以下、規範定立について深掘りしていきましょう。

はじめに「三段論法」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。三段論法とは、大前提と小前提から結論を導き出す演繹的な推論の方法のことです。演繹的というのは、「一般的な原理や原則などから、個別の事項や派生的な事柄を導き出すさま」のことをいいます。

上記のような推論の方法は、法規の適用においても用いられ、法規の適用において用いられる三段論法のことを「法的三段論法」と呼びます。法的三段論法も、三段論法と同じく大前提・小前提から結論を演繹的に導き出すことは変わりません。そして、法的三段論法におけ る大前提・小前提は、以下のものに置き換えられることになります。

大前提:法規(条文・条文解釈などによる規範の定立)
小前提:具体的事実
結論:法適用の結果

法的三段論法がどのようなものかお分かりいただけたでしょうか。

次の章では、どのように して法的三段論法を使うのか、また、規範定立のあてはめ方を解説します。

規範定立のあてはめ方をわかりやすく

ここでは、多くの人が知っている殺人罪の条文を使って、具体的に法的三段論法の使い方、 規範定立の仕方を解説していきます。 殺人罪の条文は

人を殺した者は、死刑又は無期若しくは 5 年以上の懲役に処する。

刑法第199条

という構成になっています。法律の条文の読み方として、「要件」と「効果」で分けて読む方法を使うと条文の理解をより深めることができます。

今回の条文でいえば、要件が「人を殺した者」であり、効果が「無期若しくは5 年以上の懲役に処する」ということです。この条文から読み取れる要件こそが法的三段論法でいうところの大前提であり、条文から要件を明らかにする行為が一つの規範定立行為といえます。

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では、簡単な事例で解説していきましょう。

事例

X は日ごろから A を恨んでおり、機会があれば A を殺そうと考えていた。ある日の夜、A が酔っ払って道端で倒れているのを見かけた X は、今なら容易に A を殺せると考えた。X は殺意をもって、A の首を両手で締め付け、それによって死亡させた。

この事例を法的三段論法で考えてみると、

大前提(法規):「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは 5 年以上の懲役に処する。」
小前提(具体的事実):X は A の首を両手で締め付けて殺した。
結論(結果):X は殺人罪(刑法 199 条)の罪責を負う。

法学部の答案は、このような三段階構成で答案を書いていくこととなります。つまり、「規範を定立して、それを具体的事実に当てはめていく」という思考プロセスがとても重要になってくるということです。

さて、ここまで読んだ方の中には、「答案の書き方が案外簡単だな」と感じた方もいるでし ょう。

しかし、安心してはいけません。先ほどの事例では、素直に条文に当てはめるだけで 結論が導き出せましたが、実際の試験ではそのような簡単な問題はでません。規範を定立するために法解釈が必要になる場面が多く出てきます。

次の章では、その「法解釈」について解説していきます。

規範定立の答案をどのようにするか?書き方のコツ

次に以下の事例を考えてみましょう。

事例

X は長年恋愛経験がなく、30 歳になったころから幸せな家庭が憎く感じるようになっていた。夏のある日、X が住んでいるアパートの隣の部屋に妊娠中である A とその夫 B が引っ越してきた。それからというもの、X は幸せそうにしている A と B のことが無性に腹立たしくなり、遂には、A のお腹にいる胎児だけを殺して A と B の悲しむ姿を拝んでやろうと考えた。X は、夜に B が帰宅していないことを見計らって A の部屋に押し入り、A の腹部に包丁を突き刺し、よって A の胎児を殺害した。A は奇跡的に命に別状はなかった。

このような事例において、X が A の胎児を殺害した行為について殺人罪が成立するか考えてみましょう。

もう一度、刑法 199 条の条文を確認しましょう。刑法 199 条には「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは 5 年以上の懲役に処する」と書いてありますね。前のように考えると、大前提がこの条文で、小前提が X は A の胎児を殺したから、X は殺人罪という思考プロセス になりそうですね。

しかし、これは誤りで、ここには大きな問題点が隠されています

刑法 199 条は、“人”を殺した者を処罰する規定です。さて、刑法にいう“人”には胎児は含ま れるのでしょうか。これがいわゆる法解釈のお話になります。 つまり本事例の問題点は、「胎児は刑法 199 条にいう人に該当するのか」です。

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結論をいえば胎児は 199 条にいう“人”には該当せず、胎児が出生した時点で、199 条にいう“人”となる のです。この出生がどの段階であるかについて、刑法の判例・通説は「母体から胎児の身体の一部が出た時点を出生」とする一部露出説をとっています。

つまり、本事例の胎児は一部も露出しておらず、199 条にいう“人”には当たらないので殺人罪は成立しないことになります。

もう一度この法的三段論法を確認していくと以下のようになります。

ポイント

大前提1:刑法 199 条の条文
問題点:「胎児は刑法 199 条にいう人に該当するのか」
大前提2:胎児は出生した時点で 199 条にいう人となる。その出生の時点は胎児の身体の 一部が母体から出た時点である(一部露出説)。
小前提:X は、A の胎児を殺した。
結論:X は刑法 199 条にいう“人”を殺していないので殺人罪は成立しない (以上により、Xには殺人罪は成立しませんが、X には不同意堕胎致傷罪(刑法 216 条)が成 立する余地があります。) 

すなわち、条文を素直に使うだけでは具体的事例に当てはめができない状況において、その条文の解釈上の問題点を洗い出し、その問題点を解決するための新たな規範の定立が重要になるということです。

今までの解説から、規範定立行為と法解釈は、法的三段論法を使って答案を書くときにとて も重要な要素であることが理解できたと思います。

規範定立がうまく理解できない・書けない場合の最終手段

ここまで読み進めてきた方なら答案の書き方がある程度理解できたかと思います。しかし、実際答案を書いてみると規範定立の難しさに躓くこともあるかと思います。なのでこれから、規範定立をうまくできない場合の手段を解説します。

まずは法学に強いレポート代行業者の利用です。本記事では規範定立に関して初学者でもわかりやすいように説明してきました。それでも理解が難しいと言う場合は、法学レポートを自力で書き上げ単位を取得するのが現実的に難しくなってきます。

そもそも「レポート代行という概念すら初めて聞いた」「バレたらどうなるの?」と思う方もいるかもしれません。初めてレポート代行を検討する方向けにいくつか記事があるので参考にしてください。

>>【2023 年】大学生におすすめのレポート代行業者を徹底解説

さて、もう1つの手段はずばり自力でなんとかするというものです。

大学生になって初めて受講する法律科目は、民法や憲法であることが多いでしょう。民法や憲法は、前章で例として挙げた刑法よりも条文が難解であったり、うまくイメージがつかなかったりなど、初学者には理解が難しく規範を定立するのが困難です。

そのようなときに規範定立の手助けとなるものは、ずばり最高裁判所の判例文にあります! 判例とは最高裁判所が判決・決定をしたものであり、試験問題の多くはこの判例と似た事例 が出てきます。

最高裁判所は事例を解決するにあたり、独自の規範を定立します。日本で最高峰の裁判所が定立した規範ですから、その規範をその後の裁判で下級裁判所はもちろん最高裁判所も利用します。なので、読者の皆さんも最高裁判所の規範をお借りして、答案に正しく書いてしまえば、より評価の高い答案になりうるのです。

逆を言えば、判例の事例と最高裁判所の判決文を確認し、自分なりにその判決文にある規範を理解することができなければ、答案に使うことなんてできません。 では、その判例はどのように探して、理解すればよいのでしょうか。

探し方に迷っている方は、まずは判例百選を大学の書店やネット通販から手に入れましょう。判例百選とは、有斐 閣という出版社から出版されている重要な判例が 100 個程度載っている本のことです。そこには事実の概要や、最高裁判所の判決文だけでなく、様々な大学の教授の解説文まで載っています。この解説があるからこそ、初学者はその判例を理解しやすくなり、規範を答案で使うことができるようになるのです。

また、裁判所裁判例検索というウェブサイトを使えば、 スマートフォンからも判例を確認することも可能です。法学部生に必要な最低限の能力とは、この情報収集能力といっても過言ではありません。

上述した手段で判例を理解したら、あとは答案を書く練習を行うことが高い評価を得るにあたって必要不可欠になります。自分で何度も書いてみることでより深い理解が促進され、 法的三段論法についても自然と使うことができるようになります。