建築・土木・機械設計の分野では、部材の「強度」や「安全性」を数値で正確に把握することが極めて重要です。
私たちの身の回りにある建物や橋、家具、機械の部品はすべて、「どれだけ曲げに強いか」という観点から設計されています。
たとえば橋の梁が車の重さに耐えられなければ事故につながり、住宅の床や机が人の体重でたわんでしまうと、安全性に問題が生じます。
これらの安全性を評価するために用いられるのが、「断面二次モーメント」と「断面係数」という2つの幾何学的指標です。
初学者にとっては「断面二次モーメントIと断面係数Zの違いは何か?」「どちらの公式を使えばよいのか?」といった疑問が浮かびやすいでしょう。
本記事では、それらの疑問に答えるため、定義から公式、計算例、応用方法、使い分けのポイントまでを丁寧に解説します。
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断面二次モーメントとは?
断面二次モーメントとは、部材の断面形状が曲げに対してどれだけ抵抗力を持つかを表す幾何学的な量です。
断面二次モーメントは\(x\) 軸周りの断面二次モーメント \(I_x \)、\(y \) 軸周りの断面二次モーメント \(I_y \)を考える必要があり、それぞれ以下のような式で求めることができます。
$$ I_x = \displaystyle\int y^2 dA I_y = \displaystyle\int x^2 dA $$
ここで、\(dA \) は微小な断面積、\(x, y \) は断面内の座標を示しています。
しかしながら、このような積分系のままですと使いづらいので上記式を断面形状に応じて変形する必要があります。
後ほど、長方形、円形および中空円筒の場合の断面二次モーメントの公式をご紹介いたします。
断面二次モーメントと応力との関係
断面二次モーメントは、曲げモーメントがかかった時に発生する応力の計算に使います。その時の最大曲げ応力 \(\sigma_{\text{max}}\) は、次の式で求められます。
$$ \sigma_{\text{max}} = \frac{M・c}{I} $$
ここで、\(M\) は外部から加わる曲げモーメント(\(N・m\))、\(c\) は中立軸から断面の最も遠い位置までの距離です。
この式から分かるように、\(I\) の値が大きいほど応力は小さくなり、部材の曲げに対する強度が高くなります。
言い換えれば、断面二次モーメントが大きいほど部材は曲げにくくなり、逆に小さいほど部材は曲げやすくなります。
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断面形状ごとの断面二次モーメントの公式
長方形断面
長方形の底辺の幅を \(b\)、高さを \(h\) とすると、断面が長方形の場合の断面二次モーメント(\(I_x \), \(I_y \))は以下のような公式で表すことができます。
$$ I_x = \frac{bh^3}{12} I_y = \frac{hb^3}{12} $$
円形断面
円の半径を \(r\) とすると、断面が円形の場合の断面二次モーメントは以下のような公式で表すことができます。
$$ I = \frac{πr^4}{4} $$
中空円断面
中空円の外半径を \(R\)、内半径を \(r\) とすると、断面が中空円の場合の断面二次モーメントは以下のような公式で表すことができます。
$$ I = \frac{π}{4}(R^4 – r^4) $$
T字系ような複雑な形状の断面
T字系のような複雑な形状の断面二次モーメントは、上記公式の組み合わせや平行軸の定理を用いて計算することができます。
断面係数とは?
断面係数 \(Z\) は、断面二次モーメント \(I\) と中立軸から断面の最も遠い位置までの距離 \(c\) を用いて次のように定義されます。
$$ Z = \frac{I}{c} $$
この断面係数 \(Z\) を使うことで、最大曲げ応力 \(\sigma_{\text{max}}\) は次のように計算することができます。
$$ \sigma_{\text{max}} = \frac{M}{Z} $$
断面二次モーメントから求める最大曲げ応力 \(\sigma_{\text{max}} = \frac{M・c}{I}\) と比較すると、断面係数を用いた方が非常にシンプルに計算することができます。
断面係数はこのように、設計現場での応力計算を迅速に行うための実用的な指標です。
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断面形状ごとの断面係数の公式
断面係数は上述したように、断面二次モーメント \(I\) を中立軸から最も遠い位置までの距離 \(c\) で割ることで計算されます。
ここで、中立軸から最も遠い位置までの距離 \(c\) は言い換えれば、断面の高さ方向の長さの半分と考えることができます。
長方形断面
長方形の断面の高さは \(h\) ですので、その半分は\(\frac{h}{2}\) です。従って、断面が長方形の場合の断面係数は以下のように表すことができます。
$$ Z = \frac{bh^3/12}{h/2} = \frac{bh^2}{6} $$
円形断面
円形の断面の高さは垂直方向の直径に相当し、 \(2r\) です。その半分は半径 \(r\) です。従って、断面が円形の場合の断面係数は以下のように表すことができます。
$$ Z = \frac{πr^4/4}{r} = \frac{πr^3}{4} $$
断面二次モーメントと断面係数の使い分けのポイントとは?

断面二次モーメントと断面係数の違い
断面二次モーメントと断面係数の違いを簡潔に説明すると、以下の通りです。
- 断面二次モーメント \(I \):断面形状が「どれだけ曲げにくいか」を数値で表したもの。
- 断面係数 \(Z \):断面二次モーメントを、実際の応力計算に使いやすい形に変換した指標です。
状況別の使い分け例
用途 | 使う指標 |
構造設計で「曲げに強い形状」を考える | 断面二次モーメント \(I\) |
荷重に対する応力をすぐに計算したい | 断面係数 \(Z\) |
T字型など複雑な断面形状が対象の場合 | まずは断面二次モーメント \(I\) を求め、断面係数 \(Z\) に変換するのが一般的 |
また、断面二次モーメント \(I\) と断面係数 \(Z\) は次のような関係があるため、状況に応じて相互に変換が可能です。
$$
Z = \frac{I}{c} \quad \Leftrightarrow \quad I = Z \cdot c
$$
断面二次モーメントと断面係数を用いた計算例を紹介
応力計算への応用
断面が長方形である梁に曲げモーメント \(M\) = 600 N・m が外部から加えられている時、幅 \(b = 0.05 m\)、高さ \(h = 0.2 m\) の断面係数 \(Z\) は、
$$
Z = \frac{bh^2}{6} = \frac{0.05・0.2^2}{6} = 0.000333 m
$$
従って、最大曲げ応力 \(\sigma_{\text{max}}\) は、
$$
\sigma_{\text{max}} = \frac{600}{0.000333} ≈ 1.8 × 10^6 Pa
$$
と、計算することができます。
実務での計算例
実務的には後の計算がし易いように部材の断面係数 \(Z\) を求め、その後に想定される曲げモーメントを適宜設定し、最大曲げ応力 \(\sigma_{\text{max}}\) を計算していきます。
例えば、ここに幅 \(b = 100 mm\)、高さ \(h = 200 mm\)、中立軸までの距離 \(c = h/2 = 100 mm\) の断面が長方形である梁があります。
この梁の断面二次モーメントは、以下のように計算されます。
$$
I = \frac{bh^3}{12} = \frac{100・200^3}{12} = 1.33 × 10^8 mm^2
$$
従って、この梁の断面係数は、以下のように計算されます。
$$
Z = \frac{I}{c} = \frac{1.33 × 10^8}{100} = 1.33 × 10^6 mm^3
$$
これで、この梁は断面係数 \(Z = 1.33 × 10^6 mm^3\) と計算できました。
続いて、この梁に対して曲げ応力 \(M = 50 kN・m\) が加えられると想定した場合には、最大曲げ応力 \(\sigma_{\text{max}}\) は以下のように計算できます。
$$
\sigma_{\text{max}} = \frac{M}{Z} = \frac{50 × 10^6}{1.33 × 10^6} ≈ 37.6 MPa
$$
実際には、この梁が使われる場所によって外部から加えられる曲げモーメントは異なってきます。
そのため、予め断面係数を計算しておくことによってどの場所に梁を使うことになっても迅速に曲げ応力を計算することができます。
まとめ
項目 | 意味 | 使い方 |
断面二次モーメント \(I\) | 部材の曲げ剛性を表す幾何量 | 設計段階・剛性評価 |
断面係数 \(Z\) | 曲げ応力を簡単に求めるための指標 | 応力計算・安全評価 |
以上、断面二次モーメントと断面係数の違いやその使い方について解説しました。
断面二次モーメントと断面係数の意味と使い分けを理解することは、設計の効率と精度を高めるうえで不可欠です。
一方で、実際に使いこなせなければ意味がありません。学校の課題や卒業後の実務で、これら断面二次モーメントと断面係数を使う場面に遭遇しないとも限りません。
そのため、今のうちから自分のものにできるようにしていきましょう。
しかしながら、今すぐに使いこなしたいけど時間的にそんな時間がないということもあると思います。
そんな時は、頭の良い友人に力を借りることや、弊社のような理系の課題代行サービスを利用するなどがおすすめです。